
犬の水分補給の正しい方法とは?腸に優しいゼリー・野菜・スープの活用術
犬の健康を守る上で「水分補給」は欠かせない要素です。しかし、毎日なんとなく水を置いているだけでは、1日に必要な摂取量を満たせていない場合があります。特にシニア犬、寒い季節、水をあまり飲まない犬は要注意。水分不足は腸内環境の悪化、脱水症状、体温調節の乱れなど、全身にさまざまな悪影響を及ぼし、腎臓病などの命に関わる大きな疾患につながる可能性があります。
この記事では、犬に必要な水分量の目安から、水以外で補給する方法、安全なゼリー・野菜・スープの活用法まで、獣医師推奨の情報とともに詳しく解説します。
犬の健康を守るためにも、今日からできる水分ケアを一緒に見直していきましょう。
犬の水分補給の重要性とは?水分不足が体に与えるリスク

犬の身体は、約60%が水分で構成されています。
「3日間食事を摂らなくても耐えられるが3日間水分を摂らないと命に関わる」と言われるほど、水分は愛犬が生きていくうえで欠かせないさまざまな機能を支えています。水分は、血液循環、体温調節、老廃物の排出、腸内環境の維持など、犬の生命活動の根本を支える大切な役割を持ちます。
水分が不足するだけで、体のあらゆる機能が低下し、健康トラブルの原因になります。
犬が必要とする1日の水分量の目安
一般的な水分量の目安は、愛犬の体重によって変わります。
犬の1日に必要な水分量は、体重をもとに以下の計算式で算出できます。
1日に必要な水分量(ml)=体重(kg)の0.75乗×132※健康な成犬(避妊去勢済み)の場合の計算式です。避妊去勢してない場合は計算結果を1.1倍にしてください。
推奨水分量チェッカーでは、あなたの愛犬の体重を入力するだけで、愛犬に必要な1日の水分量を簡単に知ることができます。大切な愛犬の健康を守るために、ぜひご活用ください。
水分不足が起こす脱水症状・体温調節の乱れ
水分が不足すると、以下のような症状が見られることがあります。
- 鼻や歯茎が乾く
- 尿路結石
- 膀胱炎
- 口臭、歯周病
- 便秘
- 涙やけ、目脂
- 皮膚疾患
- 毛艶の悪さ
- 肥満
- 体臭が強くなる
- 皮膚をつまんでも戻りが遅い
- 元気がない
- 食欲不振
- 体温が上昇する
特に脱水が進むと、血流が悪化し腎臓への負担が増し、命に関わるケースも。
腸内環境と水分の密接な関係
腸内環境の悪化で便の調子が悪くなる場合、水分が密接に関係しています。
腸が正常に働くためには、腸内をスムーズに流れる適度な水分量が必要です。そのため、水分不足が原因で便が硬くなり、便が腸に長く滞留することでさらに腸内の悪玉菌が増えやすい、うんちのニオイが強くなる、ガスが溜まりやすい、食欲低下、下痢と便秘を繰り返すなど全身の不調につながります。
体が「水分不足だ!」と判断すると、大腸はより多くの水分をうんちから吸収しようとするため、水分補給は、腸活の基本中の基本といえます。
犬が水を飲まない理由
犬は、喉の渇きを感じにくく自発的に水分を摂取することがあまり得意ではありません。また、水分を摂取しない理由は他にも様々あります。
- 運動量が足りない
- 食事で水分が含まれている
- 水が冷たすぎる/ぬるすぎる
- 器が気に入らない
- 体調不良(腎臓病、口内炎など)
- 加齢で喉の渇きを感じにくい
- 寒い季節で飲水量が自然と減る
特にシニア犬は口渇感が低下し、水を飲む行動そのものが減るため、飼い主が意識的に補給させる必要があります。
健康的な犬に必要な水分量

一般的な水分量の目安は、愛犬の体重によって変わります。
犬の1日に必要な水分量は、体重をもとに以下の計算式で算出できます。
1日に必要な水分量(ml)=体重(kg)の0.75乗×132
※健康な成犬(避妊去勢済み)の場合の計算式です。避妊去勢してない場合は計算結果を1.1倍にしてください。
推奨水分量チェッカーでは、あなたの愛犬の体重を入力するだけで、愛犬に必要な1日の水分量を簡単に知ることができます。大切な愛犬の健康を守るために、ぜひご活用ください。
犬への適切な水分補給方法とは?

水分補給の基本は、犬が喉が渇いた時や飲みたいタイミングで常に新鮮な状態のお水が飲める環境を作ってあげる“自由飲水”です。
しかし、自由飲水では1日に必要な水分量を満たすのは難しく、水分の摂取を工夫してあげる必要があります。
また短時間に一気に水分をたくさん摂取している場合は何か病気の疑いがあるので注意しましょう。飲みすぎは腎臓病のサインのこともあるため、普段より極端に水を飲む場合は病院へ相談してください。
散歩前後・運動後・食事中の効果的な補給タイミング
散歩前後(特に夏場)や運動後は、喉が渇いているため水分を自発的に摂取してくれるタイミングです。水分が不足するタイミングでもあるので積極的に摂取を促しましょう。特に散歩後は体温が上がり脱水しやすいため、冷たすぎない常温水を与えると良いでしょう。
また、食事中に水分を摂取させるには絶好のタイミングです。食事の中で水分を含んだ食事を与えることで自然と水分補給が可能。無理なく、水分補給ができるので飼い主にも犬にも負担がなく水分摂取ができます。
犬が水を飲まないときの対処法
犬が水を飲んでくれない場合、ステンレスの器から陶器へ変更したり、水飲み場を増やしてみたり、高さをつけてみたり、飲む時間帯を工夫してあげることが重要です。
特に、お水だけの摂取が難しい場合は、少量のヤギミルクを混ぜたり、ウェットフードを追加したり、手作りスープや市販のスープで水分量を増やしたりするのも有効な対策です。
また、水っほいのが苦手な子には水分量が多い野菜や果物を与えたり。ゼリーやアイスなどの固形物にして与えるやり方もおすすめです。食が細い犬や病中病後の犬には、好みの匂いを足して誘導すると飲みやすくなります。
水分補給ボトル・自動給水器の活用ポイント
室内では、常に新鮮な水が流れる自動給水器を使うと飲水量が増えやすくなります。
ただしフィルター替えを怠ると雑菌が繁殖しやすいため、こまめな清掃が必須です。
犬への塩分の与えすぎに注意
水分補給のためにスープや手作りご飯を使う場合でも、塩分は絶対に加えないことが大切です。
塩分過多は腎臓病や心臓病の悪化を招く可能性があるため、薄味ではなく「完全に無塩」が基本です。また、砂糖なども犬にはNGなため注意が必要です。果物も与えすぎには糖の過剰摂取になるので適量で与えるようにしましょう。
犬の水分補給を怠るリスク

水分不足は、次の通り愛犬の体のいたるところに問題を引き起こします。ここでは、水分が不足した場合の具体的なリスクを見ていきいましょう。
- 元気低下・食欲不振になる
- 便が硬くなる・便秘を起こしやすくなる
- 皮膚のハリ低下・乾燥が進む
- 涙やけ・目やにが増えやすくなる
- 尿量の減少・尿の色が濃くなる
- 痙攣や呼吸異常など重篤な症状
- 尿路結石のリスクが高まる
- 膀胱炎を引き起こしやすくなる
- 口臭の悪化・歯周病リスクの上昇
- 皮膚炎・かゆみなど皮膚疾患の誘発
- 毛艶が悪くなり被毛がパサつく
- 代謝低下による肥満リスク
- 老廃物排出不良による体臭の悪化
- 嘔吐時の脱水症状
- 夏場の熱中症リスク
元気低下・食欲不振になる
水分摂取が不足すると血液循環が悪化し、全身への酸素や栄養の供給効率が低下します。その結果、犬は元気がなくなったり、食欲が落ちたりすることがあります。特に暑い時期や運動後に回復が遅い場合は、水分不足が関係している可能性があります。
便が硬くなる・便秘を起こしやすくなる
水分が不足すると腸内で便の水分が過剰に吸収され、便が硬くなりやすくなります。硬便は排泄時の負担となり、排便を我慢することで便秘が慢性化するリスクが高まります。
皮膚のハリ低下・乾燥が進む
十分な水分が保たれていないと、皮膚の保湿機能やバリア機能が低下します。その結果、皮膚のハリが失われ、乾燥やフケ、かゆみといった皮膚トラブルが起こりやすくなります。
涙やけ・目やにが増えやすくなる
水分不足により涙の成分が濃くなると、涙が鼻涙管を通りにくくなり、目の周囲に残りやすくなります。これが続くことで、涙やけや目やにの増加といったトラブルにつながります。
尿量の減少・尿の色が濃くなる(※血尿は別の病気の可能性あり)
脱水状態では体が水分を保持しようとするため、尿量が減り、色が濃くなります。濃縮された尿は泌尿器への負担を高め、尿トラブルを引き起こす要因になるため注意が必要です。
痙攣や呼吸異常など重篤な症状
水分不足が進行すると電解質バランスが崩れ、痙攣や呼吸異常、意識障害といった重篤な症状が現れることがあります。これらは命に関わる危険なサインのため、早急な対応が必要です。
尿路結石のリスクが高まる
水分摂取量が少ないと尿が濃くなり、ミネラル成分が結晶化しやすくなります。その結果、尿路結石が形成されやすくなり、排尿時の痛みや尿閉などのリスクが高まります。
膀胱炎を引き起こしやすくなる
尿量が減ることで膀胱内に尿が長時間とどまり、細菌が繁殖しやすい環境になります。特に雌犬では、膀胱炎などの感染症リスクが高まるため、水分補給不足には注意が必要です。
口臭の悪化・歯周病リスクの上昇
水分不足により唾液量が減少すると、口腔内の自浄作用が弱まります。その結果、細菌が増殖しやすくなり、口臭の悪化や歯周病リスクの上昇につながります。
皮膚炎・かゆみなど皮膚疾患の誘発
水分不足は皮膚のバリア機能低下を招き、外部刺激やアレルゲンの影響を受けやすくします。その結果、皮膚炎やかゆみなどの皮膚疾患が起こりやすくなるリスクがあります。
毛艶が悪くなり被毛がパサつく
水分が十分に行き渡らないと、被毛や毛根への栄養供給が滞ります。その影響で毛艶が失われ、被毛がパサついて見えるようになるリスクがあります。
代謝低下による肥満リスク
水分不足は代謝機能の低下を招き、エネルギー消費効率を悪化させます。その結果、脂肪が蓄積しやすくなり、肥満のリスクが高まる可能性があります。
老廃物排出不良による体臭の悪化
水分が不足すると尿や便による老廃物の排出が滞り、体内に不要な物質が溜まりやすくなります。その影響で体臭が強くなるリスクがあります。
嘔吐時の脱水症状
犬が嘔吐したとき、体内の水分・電解質は一気に失われます。
水分補給が追いつかないと、以下の症状が出やすくなります。
・ぐったりする
・皮膚の弾力が低下
・目が落ちくぼむ
・食欲低下
嘔吐後はすぐに大量の水を飲ませるのではなく、少しずつ頻回に与えるのがポイントです。
夏場の熱中症リスク
「熱中症」というと夏場に生じる症状というイメージがありますが、実は春先や冬でも発生するため油断禁物です。
体温調節には水分が欠かせないため、普段より飲水量が増える時期は特に注意が必要です。
犬の水分補給方法は水以外でも可能?

犬の水分補給は、次の通り水以外のものでも可能です。ただし、食塩や糖分が多いものはかえって脱水症状を誘発したり、内蔵に負担をかけたりなど逆効果になるため注意が必要です。
犬の水分補給におすすめのゼリー
水分補給を目的とする場合は、水分が90%以上のものがおすすめ。無添加のものを選ぶのが理想的です。
犬用のゼリーは飲み込みやすいため、老犬の水分補給にも役立つほか、持ち歩きもしやすいので暑い日のお散歩にも便利です。
犬の水分補給におすすめのおやつ
りんごやスイカ、きゅうりなど、水分が多めのフルーツは、水分補給を兼ねたおやつに最適です。また、これらは食物繊維が豊富なので腸にも優しいのがポイント。ぜひとも腸活に活用したい食材です。
ただし、与えすぎると糖分過多になってしまうので、少量だけ与えるようにしましょう。
犬の水分補給におすすめのヤギミルク
ヤギミルクは嗜好性が高く、下痢もしにくいのがメリットです。また、カルシウムが豊富で消化にも優しいため、胃腸が弱っている犬でも飲みやすいのが特徴です。
ヤギミルクを愛犬に与える際は、水分補給用に薄めて使うのがポイントです。
犬の水分補給におすすめのウエットフード
ウェットフードの水分量は70〜80%と高く、効率よく補給できます。
ドライフードと併用することで、水分摂取量を大幅に改善することができます。
犬の水分補給に関するよくある質問

犬の水分補給に関してよくある質問をまとめました。ぜひチェックしてみてください。
- Q1.犬に何時間おきに水を与えれば良い?
- Q2. 水分補給ゼリーは毎日与えても大丈夫?
- Q3.水分補給に使える腸に優しい野菜や果物は?
- Q4.犬にスポーツドリンクを飲ませるのは危険?
- Q5.ゼリー・スープなど水以外で水分をとらせても良い?
Q1.犬に何時間おきに水を与えれば良い?
基本は「いつでも飲める状態」ですが、シニア犬や子犬、あまり水を飲まない犬などは2~3時間おきに飲むよう促すと安心です。
Q2.水分補給ゼリーは毎日与えても大丈夫?
基本的に毎日与えても問題ありませんが、ゼリーはあくまで補助的な水分源なので、新鮮な水も常に用意しておきましょう。体調や年齢に応じて、獣医師に相談するのも安心です。
Q3.水分補給に使える腸に優しい野菜や果物は?
おすすめは、きゅうり・スイカ・りんご・白菜・レタスなどです。
どれも水分が多く、腸の動きを助ける食物繊維を含んでいるのがポイントです。
Q4.犬にスポーツドリンクを飲ませるのは危険?
人間用のスポーツドリンクは糖分・塩分が多すぎるため基本的にNGです。
与えるなら必ず犬用の電解質補給飲料を選びましょう。
Q5.ゼリー・スープなど水以外で水分をとらせても良い?
問題ありません。ただし無塩・無添加が基本です。
手作りスープは、野菜を煮出した「薄い出汁」程度にしましょう。
まとめ

犬の水分補給は、健康維持はもちろん、腸内環境や腎臓の健康を守るためにも必要な大切な習慣です。愛犬の必要量を知り、適切なタイミングで補給することで、脱水や熱中症、腎臓病悪化などのリスクを大幅に減らすことができます。
また、水以外の補給方法も適切に活用すれば、水をなかなか飲んでくれない犬や、高齢犬、食が細い犬の飲水量改善にもつながるでしょう。
今日からできる小さな工夫で、愛犬の健康をしっかり守っていきましょう。