犬の腸活に水分は必要？水分補給で腸内環境を改善する方法を紹介

「愛犬の腸活にはどんなことをすればいいの？」と考えたとき、意外と見落とされやすいのが水分補給です。水分が不足すると腸内環境が乱れ、便秘や下痢など体の不調につながることがあります。とはいえ、水分が腸の働きにどんな影響を与えるのか、また適切な飲水量がどれくらいなのか分からず悩む飼い主さんも少なくありません。

この記事では、犬の腸活に水分が必要な理由から、飲まないときの原因や対処法、腸内環境を整えるための家庭でできる水分補給の工夫まで、わかりやすく解説します。

犬の腸活に水分補給は関係あるの？

水分は体をうるおすだけでなく、腸が正常に働くためにも欠かせない大切な要素です。腸の動き・善玉菌の働き・便の質すべてに関わり、腸内環境を整えるための“基礎”になります。

• 犬にとって水分補給が欠かせない理由
• 脱水が腸内環境に与える影響とは？
• 腸活は犬の健康を支える土台

犬にとって水分補給が欠かせない理由

犬の身体は、約60%が水分で構成されています。「3日間食事を摂らなくても耐えられるが3日間水分を摂らないと命に関わる」と言われるほど、水分は愛犬が生きていくうえで欠かせないさまざまな機能を支えています。

身体が正常に機能するうえでとても重要な役割を担っているため、健康な身体を保つためには充分な量の水分が必要不可欠です。ここでは、水分補給が大切な理由をわかりやすく解説します。

①健康を保つために欠かせないから

犬の体は約60〜70％を水分が占めており、水は体液の生成や栄養を全身へ届けるために欠かせない存在です。

さらに、食べ物の消化・吸収を助けたり、体温を適切に保つ働きにも水分は深く関わっており、健康維持のために非常に重要な役割を果たしています。

②代謝を支える重要な役割があるから

体内で発生した老廃物を運び外へ排出するためには、十分な水分が必要です。細胞のすみずみまで水が行き渡ることで代謝がスムーズに働き、犬の体調を良い状態に保つことができます。

③水分不足は脱水症状の原因になるから

水分が不足すると体温をうまく調節できなくなり、特に夏は熱中症に伴う脱水症状を起こす危険が高まります。

また、冬の乾燥した室内でも気づかないうちに水分が奪われて「隠れ脱水」になることがあるため、季節を問わずこまめな水分補給が欠かせません。

④腸の動き（蠕動運動）をサポートするから

腸は水分が十分にあるほど滑りが良くなり、リズムよく動きます。水分不足で腸が乾き、動きが鈍くなると、排便トラブルが起きやすくなり、腸の動きが悪く老廃物の排出が滞ると以下のような症状にも繋がります。

• 皮膚トラブル（かゆみ・マラセチア）
• 口臭
• 涙やけ
• ガス増加

脱水が腸内環境に与える影響とは？

「水を飲ませればすぐに回復する」と思われがちな脱水ですが、体内の水分が不足すると腸の機能に大きな負担がかかり、犬の体にさまざまな影響を及ぼします。ここでは、脱水が腸内環境を悪化させる仕組みを、流れに沿って順番に解説します。

①消化吸収に問題が生じる

脱水が進むと腸液や消化液が不足し、食べ物を分解する力が落ちてしまいます。その結果、体に吸収されないままの食べ物が腸内に残りやすくなり、腸内環境が乱れる原因となります。

②悪玉菌が増えやすい環境になる

水分が不足すると腸内が乾燥し、乾燥に強い悪玉菌が優勢になり、善玉菌は減りやすくなります。また、未消化の食べ物が腸内に残る状態が続くと悪玉菌のエサが増え、さらに増殖を促す原因にもつながるでしょう。

③腸の働きが低下して悪循環が続く

腸の動きが鈍くなると、消化しきれずに残った食べ物や、乾燥に強い悪玉菌が増えた腸内で便が長くとどまりやすくなります。その状態が続くことで悪玉菌がさらに増殖し、腸のバリア機能も弱まり、有害物質が体内へ入り込みやすくなるなどの悪循環につながってしまいます。

④老廃物・毒素の排泄が滞る

腸は“体のゴミ捨て場”と言われるほど老廃物や毒素を溜め込みます。
水分が少ないと排泄が滞り、体内に老廃物が蓄積し、毒素体質に陥り、さまざまな症状の引き金になりえます。

腸活は犬の健康を支える土台

腸内の細菌バランスが乱れると、便秘や下痢などの排便トラブルが起こりやすくなったり、食欲が落ちるなど、日常で気づきやすい不調が現れることがあります。さらに、免疫力が下がることで体調を崩しやすくなったり、皮膚や被毛の質が低下するなど、体の外側にも影響が及ぶ場合があります。

こうした変化は腸内環境が整っていないサインの一つと考えられるため、見逃さずにケアしてあげることが大切です。

このように、水分補給をしっかり行って腸の調子を整えてあげることは、愛犬が日々健やかに過ごすための大切な土台になります。

犬が水を飲まないときに考えられる主な原因とは？

犬が急に水を飲まなくなった場合、体の不調から生活環境の変化まで、いくつかの理由が隠れている可能性があります。

• 体の痛みや口内のトラブル
• ご飯から水分を多く摂れている
• 加齢による飲水量の変化
• 気温の変化
• 容器の形状が合わない
• 水飲み場の場所が悪い
• ストレス
• 喉の渇きを感じにくいため
• 水のニオイ・味・温度が気に入らない

体の痛みや口内のトラブル

怪我やヘルニアなどで体勢を変えるだけでも痛みがあると、水を飲む姿勢そのものが負担になってしまいます。

また、歯周病や口内炎など、口の中に痛みがある場合も水を飲まなくなる原因となります。

ご飯から水分を多く摂れている

ウェットフードや手作りのご飯、生食といった水分の多いご飯を食べている場合は、食事だけで十分な水分を補えるため、自然と飲み水の量が減ることがあります。

また、脂肪分が多いタイプのウェットフードや生食をご飯として与えていると便の量が少なくなり、水分が便として排出されにくくなる分、喉の渇きを感じにくくなるケースもあります。

加齢による飲水量の変化

年齢を重ねると喉の渇きを感じにくくなり、代謝の低下によって体が必要とする水分量も減るため、結果として飲水量が少なくなることがあります。

気温の変化

暑い季節は体温調整のために水をよく飲みますが、寒い時期は体から蒸発する水分が少なくなるため、飲む量が自然と減りやすくなります。

容器の形状が合わない

意外と多いのが容器の問題。ステンレス皿の光や反射を怖がることがあります。光の反射が「目がチカチカする」「恐怖感がある」と感じる犬もいます。

陶器のボウルに変えてあげたり飲みやすい器への変更を検討しましょう。

水飲み場の場所が悪い

床に器を設置している場合、かがむ姿勢が水を飲みづらいことがあります。高さを出してあげて、飲みやすい楽な姿勢にしてあげることが重要です。

ストレス

犬は環境の変化や来客、騒音、留守番の増加などでストレスを感じると、水を飲まなくなることがあります。緊張状態が続くことで喉の渇きを感じにくくなり、飲水場所へ行く行動も減ってしまうためです。原因を探り、安心できる環境づくりを心がけましょう。

喉の渇きを感じにくいため

犬は喉の渇きを感じにくいと言われています。そのため、自発的に水分を摂取しないため必然的に水分の摂取量が少なくなってしまいます。

特に冬場など活動量も減り、水分不足になる犬が増加します。

水のニオイ・味・温度が気に入らない

犬は人間よりも嗅覚が敏感なため、1日ずっと置きっぱなしにされたお水などは嫌がることがあります。1日に数回こまめにお水を交換し、冷たすぎずぬるすぎない新鮮なお水を準備してあげましょう。

腸内環境を整えるための水分補給のコツ

水分を無理なく補える環境づくりは、犬の腸内環境を守るうえでも欠かせません。ここでは、そのために家庭で取り入れやすい工夫を紹介します。

• 食事に水分を加える
• ヨーグルトを活用する
• 季節に合わせて工夫する
• 給水場所を見直す
• 飲む時間を工夫する
• 食事に水分を追加する
• 水分量を含んだフルーツや野菜を与える
• 器など飲みやすさを考えてあげる

食事に水分を加える

水をあまり飲まない犬でも、食事にひと工夫することで水分を摂りやすくなります。

ドライフードをぬるま湯でふやかす、ウェットフードやボイルした野菜をトッピングする、鶏肉のゆで汁を少量加えるなどの工夫は、自然と水分を摂り入れやすくする工夫として有効です。

ヨーグルトを活用する

ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸内の善玉菌を増やして腸の働きを整えるサポートをしてくれます。食事に少し加えるだけで、水分と乳酸菌を同時に補えるため、腸の調子を整えたいときに取り入れやすい方法です。

与えるときは無糖タイプを選び、量はフードの2割程度までにとどめると安心です。

乳酸菌を継続して摂ることで、下痢や便秘などの軽い不調が改善に向かうケースもあります。

季節に合わせて工夫する

暑い時期はこまめに水を入れ替えて新鮮な状態を保ち、寒い季節はぬるま湯やスープで体を温めながら水分を補えるようにしましょう。季節に合った方法で水分補給できるように工夫することで、腸の働きも安定しやすくなります。

給水場所を見直す

飲み水の場所が落ち着かない環境にあると、水を飲むこと自体がストレスになる犬も少なくありません。

安心して過ごせる場所の近くに給水スポットを増やしたり、暑さや寒さが和らぐ位置へ移動させることで、自然と水分を摂る機会が増えるでしょう。

飲む時間を工夫する

寝る前、寝起き、散歩から帰ってきた後、お留守番後など、タイミングを見て愛犬が水分を摂取しそうなタイミングでしっかり水分補給を促しましょう。

自発的に飲まない子でも飼い主さんに促されることで飲んでくれることもあります。

食事に水分を追加する

ドライフードのみの食事では圧倒的に水分が不足します。市販のウェットフードや粉末スープ、ヤギミルクなどをフードに追加して食事と一緒に水分を摂取するようにしましょう。

お肉の茹で汁や手作りの野菜スープなど作ってあげても喜びます。ただのお水を飲ませるより簡単に水分摂取させやすい方法です。

水分量を含んだフルーツや野菜を与える

きゅうり・スイカ（種と皮を除く）・梨やりんごのすりおろしなど水分量を含んだ野菜や果物をおやつやフードのトッピングとして与えると水分を増やすよりも喜んで食べてくれます。

高水分食材は口当たりよく水分補給になり、嗜好性も上がります。しかし与えすぎには注意が必要です。

器など飲みやすさを考えてあげる

プラスチック製の器はにおいが移りやすく雑菌も増えやすいため、ステンレスや陶器、ガラス製などのにおいが付きにくい器に変えると飲みやすくなることがあります。

床に器を設置している場合、かがむ姿勢が水を飲みづらいことがあります。高さを出してあげて、飲みやすい楽な姿勢にしてあげることが重要です。

また、常に新鮮な水が流れる自動給水器に変えると、水の動きに興味を示して飲水量が増える犬もいるので参考にしてみてください。

水の量は日ごろから確認しよう

愛犬の飲水量を日ごろから把握しておくことは、小さな体調の変化に気づくための大切な習慣です。

犬の1日に必要な水分量は体重ごとに違ってきます。体重をもとに計算式で算出できます。

1日に必要な水分量（ml）＝体重（kg）の0.75乗×132
※健康な成犬（避妊去勢済み）の場合。避妊去勢してない場合は、計算結果を1．1倍に。

同じ体重でも活動量や年齢、健康状態によって必要な水分量が変わるためです。まずはこの目安を参考にしつつ、普段の飲水量と比べて不足がないか確認してみてください。

飲水量は、1日に与えた水の量と与えているフードの水分含有量の2つの水分量を足したものが1日に実際に摂取できている水分量です。普段の量を知っておくことで、異変に気づきやすくなり、早めのケアにつなげられるでしょう。

犬の水分補給と腸活に関するよくある質問

ここでは、犬の水分補給や腸活に関して飼い主さんから特に多い質問をまとめて紹介します。

• Q1.1日に必要な水の量はどれくらい？
• Q2.愛犬が冷たい水しか飲まないけど大丈夫？
• Q3.自分で水を飲めないときはどうすればいい？
• Q4.犬が脱水症状になっているか見分ける方法は？
• Q5.シニア犬にヨーグルトを与えても大丈夫？
• Q6.ヨーグルトを与えるときに注意すべきことは？

Q1.1日に必要な水の量はどれくらい？

A.犬の1日に必要な水分量は体重ごとに違ってきます。体重をもとに計算式で算出できます。

1日に必要な水分量（ml）＝体重（kg）の0.75乗×132
※健康な成犬（避妊去勢済み）の場合。避妊去勢してない場合は、計算結果を1．1倍に。

同じ体重でも活動量や年齢、健康状態によって必要な水分量が変わるためです。まずはこの目安を参考にしつつ、普段の飲水量と比べて不足がないか確認してみてください。

Q2.愛犬が冷たい水しか飲まないけど大丈夫？

A.犬が冷たい水を好んで飲むこと自体は珍しくありませんが、冷たすぎる水は腸の働きを弱める原因になることがあるので注意が必要です。

犬の腸は体温に近いぬるま湯程度の温度で最もよく働くとされており、氷水のように温度差が大きい飲み物を与えると、消化・吸収の機能が落ちてしまうおそれがあります。そのため、下痢や嘔吐、食欲の低下など、お腹の不調につながるケースもあります。

特に子犬やシニア犬、持病がある犬は体温調節が苦手なため、冷たい水の量や頻度には注意しましょう。

Q3.自分で水を飲めないときはどうすればいい？

A.介護が必要なほど体力が落ちていたり、自力で水を飲むのが難しい場合は、スポイトやシリンジを使い、口の横から少量ずつ飲ませる方法が役立ちます。

ただし、腎臓の不調などが疑われる場合は点滴が必要になることもあるため、体調に不安があるときは早めに動物病院へ相談することが大切です。

Q4.犬が脱水症状になっているか見分ける方法は？

A.水をあまり飲めていない状態が続くと、元気がなくなる、食欲が落ちる、下痢や嘔吐が出るなど、脱水の初期症状が現れることがあります。

また、尿の量が減ったり色が濃くなる、皮膚をつまんでも戻りにくい、歯ぐきが乾いているといった変化は重度の脱水症状を疑うポイントです。

これらの症状が見られたときは、重症化を防ぐためにもできるだけ早く動物病院に相談しましょう。

Q5.シニア犬にヨーグルトを与えても大丈夫？

A.シニア犬でも、適量であればヨーグルトを与えても問題ありません。

高齢になるとドライフードが飲み込みにくくなることがあるため、ヨーグルトを少量絡めて湿り気を加えると、食べやすくなるケースもあります。

また、内臓の働きが弱ってくる年代なので、与える際は無糖・低脂肪タイプを選ぶことで体への負担を抑えられます。はじめて与えるときは、愛犬の様子を見ながら少量から試すようにしましょう。

Q6.ヨーグルトを与えるときに注意すべきことは？

A.ヨーグルトにはタンパク質が含まれるため、体質によってはアレルギー反応が出ることがあります。

また、牛乳由来の乳糖をうまく消化できない犬では、下痢やお腹の不調につながる場合もあるため注意が必要です。

製造過程で乳糖の一部は分解されていますが、それでも負担になる可能性があるため、初めて与えるときはごく少量から始めるのが安心です。

まとめ

犬の腸活には、水分補給がとても大切です。水分が不足すると腸内環境が乱れやすくなり、便秘や下痢など体の不調につながることもあります。

飲まない原因を知り、食事への水分追加やヨーグルトの活用、季節に合わせた工夫などで、無理なく水分を摂れる環境を整えてあげましょう。

日ごろから飲水量をチェックしつつ、愛犬に合ったケアを続けることで腸の調子が安定し、健康維持にもつながります。

ぜひ今日から、水分補給を意識して愛犬の腸活をサポートしていきましょう。