
犬の水分不足とは?症状と状況別の水分補給方法を解説
愛犬が突然水を飲まなくなると、「何か体調に問題があるのでは?」と不安になる飼い主さんは多いものです。水分が摂れない状態が続くと、軽い不調から病気につながる可能性もあるため、早めに原因を見極めて対処することが大切です。
本記事では、1日に必要な水分量の計算方法や、水分不足で起こりやすい病気、状況別にできる水分補給のコツをわかりやすく解説します。

著者
藤井 麻乃子(ふじい そのこ)
愛犬のための水分補給トッピングスープ 「ones」 スタッフ
ミックス犬2頭と暮らす愛犬家。シュナウザー×マルチーズのパピーと、プードル×イングリッシュスプリンガーの3歳の成犬と日々の暮らしを楽しみながら、実際に試した安心・安全なドッグフードレビューを中心に情報を発信しています。

著者
飛田 邑貴(とびた ゆうき)
愛犬のための水分補給トッピングスープ 「ones」 代表
【経歴】2018年、株式会社gojuonを創業。愛犬のゴールデンレトリバーとの別れをきっかけ
に、愛犬たちの食事と向き合い、2020年に完全オーガニックフレッシュフード「BIO POUR CHIEN」の代表取締役に就任。2022年、愛犬のための水分補給トッピングスープ「ones」をリリース。現在は、オーストラリアンラブラドゥードルと暮らしながら、手作り食とドライフードと併用。
犬の脱水症状を防ぐために知りたい「水」の大切な役割

犬の体は約60〜70%が水分でできており、この水分が体温調節や栄養の運搬、老廃物の排出など、生命維持に欠かせない働きを担っています。
十分な水分が摂れない状態が続くと代謝が落ち、体内のバランスが乱れやすくなります。その結果、元気がない、食欲が落ちるといった不調が現れることがあるのです。
こうしたトラブルを防ぐためにも、日常的に水分補給がスムーズにできる環境を整えておくことが大切です。
犬の水分補給量は1日どれくらい必要?

犬が1日に必要とする水分量を知っておくと、水分不足の早期発見にもつながります。
犬が1日に必要とする水分量の目安
犬の1日に必要な水分量は体重ごとに違ってきます。体重をもとに以下の計算式で算出できます。
1日に必要な水分量(ml)=体重(kg)の0.75乗×132
※健康な成犬(避妊去勢済み)の場合。避妊去勢してない場合は、計算結果を1.1倍に。
同じ体重でも活動量や年齢、健康状態によって必要な水分量が変わるためです。まずはこの目安を参考にしつつ、普段の飲水量と比べて不足がないか確認してみてください。
犬が水を飲まなくなる主な理由

犬が水を飲まない状態が続くと水分不足になり、体調に影響が出ることもあります。飲まなくなる理由を知っておくことで、早めに異変に気づき、適切な対応がとりやすくなります。
体の痛みや口内トラブル
腰や関節の痛みなどで体を動かすのがつらい場合、水を飲む姿勢を取ること自体がつらくなることがあります。また、歯周病や口内炎などの口内トラブルがあると、痛みから飲水を避けてしまうこともあります。
季節や気温の変化
気温の高い夏は、体から熱を逃がそうとして水分を多く必要とします。一方、寒い季節は体から失われる水分が少ないため、結果として飲む量が減りやすくなります。
容器の形状が合わない
器の素材や形、飲み口の高さなどが好みに合わないと、犬が飲みにくさを感じて水を口にしなくなることがあります。
水飲み場の場所が悪い
落ち着かない場所に器が置かれていたり、足元が不安定な場合、飲みに行くのをためらうことがあり、結果として飲水量が減ってしまうことがあります。
ストレス
環境の変化や生活リズムの乱れが続くと、犬はストレスをため込み、落ち着いて水を飲めなくなることがあります。
特に、引っ越しや家具の配置換え、家族構成の変化などがあると、水飲み場に行くことさえためらってしまうこともあります。
老犬のため
年齢を重ねると喉の渇きを感じにくくなり、水を飲む量が自然と少なくなることがあります。さらに代謝が落ちる影響で、若い頃より水分を必要としなくなる場合もあります。
犬の水分不足で現れるサインと注意すべき症状・病気

1日に必要な水分量を満たせてない状態が続くと、身体の巡りが悪くなり、体のさまざまな働きに影響が出て、思わぬ症状や体調不良を引き起こすことがあります。
ここでは、水分不足が原因で起こりやすいトラブルや注意したい症状や病気について、わかりやすく整理していきます。
水分不足に気づくサインとは
犬が水分不足になると、まず尿の色が濃くなる、排尿回数が減るなどの変化が表れやすくなります。さらに、体内の潤いが不足することで涙が濃くなり、涙やけが悪化するケースも見られます。
いつもよりなんとなく元気がない、食欲が落ちている、水を飲む量が多い、皮膚が乾燥しているなど、いつもと違う様子がある場合は脱水の可能性もあるため、早めに水分を摂らせることを意識しましょう。
水分不足が引き起こす症状や病気
水分不足の状態が続くと、体の機能にさまざまな不調が出て、以下のような思わぬ症状につながることがあります。
- 尿路結石
- 膀胱炎
- 口臭、歯周病
- 便秘
- 涙やけ、目脂
- 皮膚疾患
- 毛艶の悪さ
- 肥満
- 体臭が強くなる
また慢性的に水分が不足すると、身体の外に毒素を排出できなくなり、体内が毒素体質に陥ります。
その場合、犬の寿命にも大きく関わる腎臓病や心臓病、肝臓病、膵臓病、脳障害、歯周病、ホルモン病、代謝障害、 関節障害 、 椎間板ヘルニア、筋肉の障害 、血管病など、ありとあらゆる病気の原因になる可能性があります。
熱中症
水分が足りなくなると、体の熱をうまく逃がせなくなり、体温が急上昇しやすくなります。
犬は汗で体温調節ができないため、口を開けてハアハアとしながら熱を逃がしますが、水分不足の状態ではこの働きが十分に機能しません。その結果、体温が下がりにくくなり、熱中症を起こす危険が高まってしまいます。
- ぐったりしている
- 呼吸数が多い、パンティングしている
- 眼や口が充血している
- 体が熱い、よだれが多い
- ふらふらしている
- 心拍数が多い、不整脈
- 嘔吐、下痢
- ショック、痙攣
- 吐血、血尿、血便、皮下出血
- 虚脱、昏睡
このような症状が現れた場合、熱中症の可能性があります。
運動やパンティング、てんかん発作などの発熱が、高温多湿や水分不足、上気道疾患、肥満、被毛等によって放熱が妨げられると熱中症になるので注意が必要です。
尿路結石・膀胱炎・血尿
水分が不足すると尿が濃くなり、結石のもとになるミネラル成分(カルシウム・マグネシウム・リンなど)が高濃度になり、固まりやすくなるため、尿路結石を発症しやすくなります。また、尿量が減って膀胱に尿が長くとどまると細菌が増えやすくなり、膀胱炎の炎症を悪化させやすくなります。
これらのトラブルが進行すると血尿が見られるケースもあるため、日頃から水分補給を意識してあげることが大切です。
腎臓病
腎臓は尿をつくり、体内の老廃物を取り除く重要な役割を担っています。しかし、水分不足の状態が続くと血液が濃くなり、腎臓への負担が大きくなるため、機能の低下につながることがあります。
腎臓の働きが弱まると老廃物をうまく排出できず、体内に蓄積してしまいます。進行すると全身の不調を引き起こし、最悪の場合は腎不全を招くリスクもあるため、早めのケアが欠かせません。
便秘(うんちが硬い・出づらい)
水分が十分に摂れない状態が続くとうんちが硬くなり、排泄しづらくなることで便秘を起こしやすくなります。犬の水分不足はうんちの変化として現れることが多く、便秘のサインを見逃さないことが大切です。
特に高齢の犬や持病のある犬は、腸の動きが弱まりやすく、お腹にガスがたまって張りを感じることもあるため、日頃から注意が必要です。
涙やけ
水分が不足すると涙の排出がスムーズにいかなくなり、涙を鼻へ流す「鼻涙管」が詰まりやすくなります。また、目周りの毛穴が詰まりやすく涙の出口(マイボーム腺)が詰まり、涙の質が悪化します。
その影響でさらに涙やけが増加することも。体内の水分が減ると、涙の成分バランスが濃縮され涙やけしやすい状態に陥ります。
痙攣(けいれん)・てんかん発作
水分不足が続いて脱水が進むと、体内の電解質バランスが崩れ、けいれんを起こすことがあります。
特に、もともとてんかんを持つ犬では、水分不足がきっかけで発作が悪化する可能性もあるため、常に水を摂れる環境づくりが重要です。
【状況別】犬の水分補給の方法と飲ませ方のポイント

犬が十分に水分補給できていないと感じたときは、状況に合わせた工夫が必要です。シーンごとに適した飲ませ方を知っておくことで、水分不足を無理なく防ぎやすくなります。
- 〈夏〉熱中症に気をつける
- 〈冬〉スープなどで水分補給できるよう工夫する
- 〈散歩などの外出時〉こまめに給水する
- 〈老犬〉飲みやすいよう工夫する
- 〈どうしても飲まないとき〉口元からゆっくり与える
- 飲む時間を工夫する
- 食事に水分を追加する
- 水分量を含んだフルーツや野菜を与える
- 器など飲みやすさを考えてあげる
〈夏〉熱中症に気をつける
暑い季節は、室内でも気温が上がりやすく、水分不足から熱中症になることがあります。エアコンや風通しを整えつつ、涼しい場所に水飲み場を増やして、いつでも水を口にできる環境をつくっておきましょう。
また、外に出る際は、日差しの弱い時間帯を選びましょう。
なかなか水に口をつけてくれないときは、水に氷を1〜2個入れて温度を調整するのも有効です。
〈冬〉スープなどで水分補給できるよう工夫する
冬は喉の渇きを感じにくいのですが、実は暖房などで空気が乾燥し脱水になりやすいので注意が必要です。家の中にいくつか器を置き、どこでも水を飲める環境を整えておきましょう。冷たい水は避けて、常温〜ぬるめに調整すると飲みやすくなります。
また、食事に温かいスープを少量混ぜると香りが立ち、寒い季節でも自然と水分補給が進みやすくなります。
〈散歩などの外出時〉こまめに給水する
外では周囲の音やにおいに気を取られやすく、水を飲む余裕がない犬も少なくありません。そのため、歩きながらではなく、休憩中や信号待ちのタイミングで数口ずつ飲ませると落ち着いて水分を摂りやすくなります。
外での水分補給は、一度にまとめて飲ませるよりも、少量をこまめに与えることがポイントです。
〈老犬〉飲みやすいよう工夫する
年齢を重ねた犬は首や肩に負担がかかりやすいため、無理なく顔を近づけられる高さに器を調整してあげると飲みやすくなります。
また、ぬるめのスープやゼリーなど、香りが広がるものを食事に添えると、嗅覚や噛む力が弱くなった犬でも口にしやすくなるので、おすすめです。
〈どうしても飲まないとき〉口元からゆっくり与える
器から飲もうとしない場合、手で水をすくって口元に近づけると、自分から飲んでくれることがあります。
まったく飲まないときは、シリンジを口角に添えて少しずつ流し込み、無理のない範囲でゆっくり水分を与えてください。
飲む時間を工夫する
寝る前、寝起き、散歩から帰ってきた後、お留守番後など、タイミングを見て愛犬が水分を摂取しそうなタイミングでしっかり水分補給を促しましょう。
自発的に飲まない子でも飼い主さんに促されることで飲んでくれることもあります。
食事に水分を追加する
ドライフードのみの食事では圧倒的に水分が不足します。市販のウェットフードや粉末スープ、ヤギミルクなどをフードに追加して食事と一緒に水分を摂取するようにしましょう。
お肉の茹で汁や手作りの野菜スープなど作ってあげても喜びます。ただのお水を飲ませるより簡単に水分摂取させやすい方法です。
水分量を含んだフルーツや野菜を与える
きゅうり・スイカ(種と皮を除く)・梨やりんごのすりおろしなど水分量を含んだ野菜や果物をおやつやフードのトッピングとして与えてみましょう。
水分を増やすよりも喜んで食べてくれます。高水分食材は口当たりよく水分補給になる。嗜好性も上がります。しかし与えすぎには注意が必要です。
器など飲みやすさを考えてあげる
プラスチック製の器はにおいが移りやすく雑菌も増えやすいため、ステンレスや陶器、ガラス製などのにおいが付きにくい器に変えると飲みやすくなることがあります。
床に器を設置している場合、かがむ姿勢が水を飲みづらいことがあります。高さを出してあげて、飲みやすい楽な姿勢にしてあげることが重要です。
また、常に新鮮な水が流れる自動給水器に変えると、水の動きに興味を示して飲水量が増える犬もいるので参考にしてみてください。
犬の水分不足に関するよくある質問

ここでは、水分不足に関して飼い主さんから寄せられる疑問をまとめて、わかりやすく紹介します。
- Q1.子犬が水を飲まないときはどうすればいい?
- Q2.犬が水を飲まないとき、何時間まで様子を見てよい?
- Q3.脱水症状の見分け方は?
- Q4.犬の血尿は水分不足が原因?
- Q5.犬の口臭は水分不足が原因?
Q1.子犬が水を飲まないときはどうすればいい?
A.子犬が水をあまり飲まないのは、食事からの水分で足りている場合や、寒さで喉の渇きを感じにくくなっていること、環境の変化によるストレスなどが影響しているかもしれません。
対策としては、ウェットフードに変えてみる、ドライフードをぬるま湯でふやかす、水飲み場をいくつか用意する、水の温度を調整して飲みやすくする、といった方法が役立ちます。
ただし、急に飲まなくなった、食欲がない、元気がないなど気になる変化がある場合は、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。
Q2.犬が水を飲まないとき、何時間まで様子を見てよい?
A.犬が水を飲まない状態は、半日〜1日でも脱水のリスクが高まることを覚えておきましょう。個体差はありますが、水をまったく飲まない時間が長引くほど体への負担は大きくなり、24時間ほとんど水分を摂れない場合は脱水が深刻化する恐れがあります。
元気がない、尿量が少ない、食欲が落ちているなどの変化が見られたときは、様子を見続けず、早めに動物病院へ相談してください。
Q3.脱水症状の見分け方は?
A.以下の症状が出た場合、脱水のサインです。
- 眼や口が充血している
- 体が熱い、よだれが多い
- ふらふらしている
- 心拍数が多い、不整脈
- 嘔吐、下痢
- ショック、痙攣
- 吐血、血尿、血便、皮下出血
- 虚脱、昏睡
こうした様子が見られたときは、首や肩甲骨の辺りの皮膚をつまんで5cmほど持ち上げて、皮膚が戻るまでの時間を測定する「ツルゴールチェック」も目安になります。つまんだ皮膚が元に戻るまで2秒以上がかかる場合は、脱水が進んでいる可能性があるため注意が必要です。
Q4.犬の血尿は水分不足が原因?
A.水分不足そのものが血尿を直接引き起こすわけではありませんが、飲水量が減ることで尿が濃くなり、結晶や結石ができやすくなります。その結果、膀胱炎や尿路結石を起こし、血尿につながることがあります。
逆に、十分な水分が摂れていれば尿の流れが保たれ、細菌や老廃物が体外に排出されやすくなるため、症状の悪化を防ぎやすくなります。
血尿が見られた場合は早めに受診しつつ、普段から水を飲みやすい環境づくりとこまめな給水を心がけてください。
Q5.犬の口臭は水分不足が原因?
A.水分不足で口の中が乾くと、唾液が減って粘度が高くなり、生臭い口臭が出ることがあります。暑さによる口呼吸や環境の乾燥でも口腔内が乾きやすくなるため、こまめな水分補給と室温管理を意識してあげてください。
ただし、水分を十分にとっていても口呼吸が続く場合は、鼻づまりなど別の疾患の可能性もあるため、早めに動物病院で相談しましょう。
まとめ

犬の水分不足は、熱中症や尿トラブルなどさまざまな体調不良を引き起こすため、日頃からこまめな水分補給を意識することが大切です。
季節や生活環境、加齢など、水を飲まなくなる理由は犬によってさまざまです。いつもと飲水量が違うと感じたら、早めに原因を確認し、状況に合った対策を取るようにしましょう。また、状況別の飲ませ方を知っておくと、犬が水を飲みにくい場面でもスムーズにケアできます。
普段から水分不足のサインを見逃さず、愛犬が安心して過ごせる環境づくりを心がけてください。