犬が水を飲まないのはなぜ？原因と水分補給の方法を徹底解説

「うちの犬が最近あまり水を飲まないのはなぜ？」と不安になる飼い主の方は少なくありません。水を飲まない状態が続くと脱水や体調悪化につながることもあるため、原因を早めに把握することが大切です。

この記事では、犬が水を飲まなくなる主な理由と、自宅でできる水分補給の工夫をわかりやすく紹介します。愛犬が安心して毎日を過ごせるよう、まずは状況に応じた正しい対処法を一緒に確認していきましょう。

犬が水を飲まない原因とは？

犬が水を飲まないと「どこか具合が悪いのかな？」と不安になるものです。まずは、よくある原因を知り、当てはまるものがないか確認してみましょう。

• 食事から十分に水分補給できている
• 体や口に痛みがある
• 夏バテで水を飲まない
• ストレスで水を飲まない
• 老犬は飲水量が減りやすくなる
• 喉の渇きを感じにくいため
• 水のニオイ・味・温度が気に入らない
• 容器の素材が気に食わない
• 多頭飼いで遠慮している

食事から十分に水分補給できている

犬が水をあまり飲んでいないように見えても、実際には食事から必要な水分をしっかり摂れていることがあります。

本来、犬は捕獲した獲物から体液や血液などと一緒に水分を摂取していました。そのため食事から水分を摂取するのが習性としてあるため、ドライフードの水分量は約10％ですが、ウェットフードや手作りご飯には約80％もの水分が含まれています。

そのため、ドライフードからそうした水分の多い食事に変えた場合、飲水量が減るのは自然な変化といえるでしょう。

体や口に痛みがある

体や口に痛みがあると、水を飲む動作そのものがつらくなり、飲みたくても飲めない状態になることがあります。

首のヘルニアや関節炎がある場合は器に頭を下げる姿勢が難しくなり、歯周病や口内炎、口腔内の腫瘍は水を含むだけで痛みが出ることがあります。

痛みが長引く場合は病気が隠れている可能性もあるため、早めに動物病院へ相談すると安心です。

夏バテで水を飲まない

犬が夏バテになると、水を飲む気力が落ちてしまうことがあります。軽い場合は元気がない程度で済みますが、悪化すると脱水症状や嘔吐、下痢などの重い症状が現れることもあります。

そのため、暑い季節はいつも以上に飲水量の変化に気を配ることが大切です。

ストレスで水を飲まない

慣れない場所や急な環境の変化に不安を感じると、ストレスで水を口にしなくなることがあります。

引っ越しや来客、大きな音など思い当たる出来事がないか確認し、安心して過ごせる静かな環境を整えてあげることが大切です。

老犬は飲水量が減りやすくなるから

シニア期の犬は加齢によって体の動きがゆっくりになり、日常の行動量が少なくなることで水を飲む回数も減りやすくなります。また、年齢を重ねると喉の渇きを感じにくくなるため、自分から積極的に水を飲もうとしないこともあります。

ただし、老犬が急に水を飲まなくなる場合は、病気や余命に影響する体調の変化が隠れていることもあります。いつもと違う様子が続くときは、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。

喉の渇きを感じにくいため

犬は喉の渇きを感じにくいと言われています。そのため、自発的に水分を摂取しないため必然的に水分の摂取量が少なくなってしまいます。

特に冬場など活動量も減り、水分不足になる犬が増加します。

水のニオイ・味・温度が気に入らない

犬は人間よりも嗅覚が敏感なため、1日ずっと置きっぱなしにされたお水などは嫌がることがあります。1日に数回こまめにお水を交換し、冷たすぎずぬるすぎない新鮮なお水を準備してあげましょう。

容器の素材が気に食わない

意外と多いのが容器の問題です。ステンレス皿の光や反射を怖がることがあります。

光の反射が「目がチカチカする」「恐怖感がある」と感じる犬もいます。陶器のボウルに変えてあげたり飲みやすい器への変更を検討しましょう。

多頭飼いで遠慮している

他の犬が優位にいると、「水皿に近づくのが怖い」「順番待ちをしている」という場合もあります。多頭飼育の家庭ではよく見られる理由です。

犬が水を飲まないときの対処法

犬が水を飲まないときは、まず自宅でできる簡単な工夫から試して原因を探ることが大切です。水の与え方や環境を少し変えるだけで飲んでくれることも多いため、負担のない方法から順に取り入れてみてください。

• ご飯に水分をプラスする
• 水に味付けして飲みやすくする
• 器を飲みやすいものに変える
• 水の温度を変えてみる
• 子犬が水を飲まないときは早めに対応する
• 水飲み場を増やして配置を工夫
• 水分量を含んだフルーツや野菜を与える

ご飯に水分をプラスする

ドライフードにぬるま湯を加えて柔らかくしたり、お肉の茹で汁や野菜スープ、市販の粉末スープなどを加えたり、ウェットフードを混ぜることで、食事から自然に水分を摂ることができます。

食事から直接水分を摂取できることでお水の摂取が苦手な犬でも摂取することが可能です。また、水分と食事を一緒に摂取することで胃腸にも優しく、嗜好性も高くなるのでメリットが多いでしょう。

水に味付けして飲みやすくする

水にほんの少し風味を加えると飲んでくれる犬も多く、犬用ミルクを溶かしたり、塩分を含まないササミのゆで汁を少量混ぜる方法が効果的です。

ウェットフードのスープの部分を水に少量加えると飲みやすくなることもありますが、人用のだしや調味料入りのスープは塩分が多く危険なため避けましょう。

器を飲みやすいものに変える

プラスチック製の器はにおいが移りやすく雑菌も増えやすいため、ステンレスや陶器、ガラス製などのにおいが付きにくい器に変えると飲みやすくなることがあります。

また、常に新鮮な水が流れる自動給水器に変えると、水の動きに興味を示して飲水量が増える犬もいます。

床に器を設置している場合、かがむ姿勢が水を飲みづらいことがあります。高さを出してあげて、飲みやすい楽な姿勢にしてあげることが重要です。

水の温度を変えてみる

冷たすぎる水が苦手な犬もいるため、常温の水や少しぬるめの水に変えるだけで飲んでくれることがあります。

季節に合わせて水の温度を調整する方法も効果的で、冬はぬるま湯、夏は氷を少量入れて冷やすなど、いくつか試すことで愛犬に合った温度が見つかるでしょう。

子犬が水を飲まないときは早めに対応する

子犬は体内の水分が失われやすく、脱水になりやすいため、水を飲まないときは早めの対応が必要になります。まずは器の高さや水の温度を調整し、落ち着いて飲める環境を整えてあげると効果的です。

それでも改善しない場合は体調不良が隠れている可能性もあるため、早めに動物病院へ相談するようにしましょう。

水飲み場を増やして配置を工夫

水飲み場を１箇所だけにせずに、家のあちこちに数か所に水を置く（寝床近く、キッチン、リビングなど）と効果的です。多頭飼いの場合は特に、頭数ごとみ器を準備してあげるのがおすすめです。

水分量を含んだフルーツや野菜を与える

きゅうり・スイカ（種と皮を除く）・梨やりんごのすりおろしなど水分量を含んだ野菜や果物をおやつやフードのトッピングとして与えると水分を増やすよりも喜んで食べてくれます。

高水分食材は口当たりよく水分補給になり、嗜好性も上がります。しかし与えすぎには注意が必要です。

犬が水を飲まないとどうなる？考えられるリスクとは？

水分不足が続くと、尿路結石や膀胱炎といった泌尿器のトラブルが起こりやすくなります。これらは比較的よく見られる症状で、早めの対策が重要です。

さらに、長期間の脱水は腎臓にも負担をかけ、腎臓病を発症するリスクを高めます。腎機能が低下した状態が続くと、進行とともに吐き気や倦怠感が強まり、水を飲む量が極端に減ることもあります。

また、水分不足になると、十分に尿で老廃物を排泄できなくなり、腎臓病のリスクが高まります。
腎臓病は、シニア犬の死亡原因の第３位にあたり、命に関わる大きな疾患につながることもあります。

末期に近い腎不全では、水をほとんど口にしなくなる犬が見られるため、早期の受診が欠かせません。

こんな水分不足の症状が出たら早めに動物病院へ

犬が水を飲まない状態が続くと、体の中の水分が急激に失われ、危険な症状につながることがあります。いつもと違うサインが見られた場合は、早めに動物病院へ相談することが大切です。

• ぐったりして元気がない
• 嘔吐や下痢が続いている
• 丸一日以上、水を飲まない
• おしっこの量や色がおかしい
• 脱水症状が疑われるサインが見える
• 鼻や口の中が乾燥する

ぐったりして元気がない

犬がいつもより明らかに元気がなく、ぐったりして動こうとしない場合は注意が必要です。脱水や発熱などの可能性があるため、早めに受診することをおすすめします。

嘔吐や下痢が続いている

嘔吐や下痢が続いている場合は、胃腸のトラブルや感染症が原因となっていることがあります。急速に脱水が進むおそれがあるため、早めの受診を検討してください。

丸一日以上、水を飲まない

24時間以上まったく水を口にしない場合は、脱水のリスクが一気に高まります。特に子犬や老犬は体内の水分が失われやすいため、注意が必要です。

おしっこの量や色がおかしい

おしっこの回数が極端に少なく、濃い黄色〜茶色っぽい色になっている場合は、体内の水分が不足しているサインと考えられます。脱水が進行している可能性があるため、受診することをおすすめします。

脱水症状が疑われるサインが見える

目が充血している・体が熱い、よだれが多い・ふらふらしている・心拍数が多い、不整脈・嘔吐、下痢・ショック、痙攣・吐血、血尿、血便、皮下出血・虚脱、昏睡といった変化は、脱水のサインです。

こうした様子が見られたときは、首や肩甲骨の辺りの皮膚をつまんで5cmほど持ち上げて、皮膚が戻るまでの時間を測定する「ツルゴールチェック」も目安になります。つまんだ皮膚が元に戻るまで2秒以上がかかる場合は、脱水が進んでいる可能性があるため注意が必要です。

 鼻や口の中が乾燥する

鼻や口の中が乾燥して、歯茎が乾いて粘り気がある場合は注意が必要です。鼻が乾いている、舌の表面が乾き気味など軽度な脱水症状が出始めたら気をつけましょう。

犬が1日に必要な水分量と飲水量の確認方法とは？

犬が1日にどのくらい水分を摂取する必要があるのかを知っておくことは日々の健康管理にとても役立ちます。

• 1日に必要な水分量
• 飲水量を測って確認する方法

1日に必要な水分量

犬の1日に必要な水分量は体重ごとに違ってきます。
体重をもとに計算式で算出できます。
1日に必要な水分量（ml）＝体重（kg）の0.75乗×132
※健康な成犬（避妊去勢済み）の場合。
避妊去勢してない場合は、計算結果を1.1倍に。

同じ体重でも活動量や年齢、健康状態によって必要な水分量が変わるためです。まずはこの目安を参考にしつつ、普段の飲水量と比べて不足がないか確認してみてください。

飲水量を測って確認する方法

食事からの水分量も1日を摂取する水分量に計算するので食事の中でどのくらい水分が含まれているか確認しましょう。

市販のドライフードなどの場合は、袋に水分含有量の記載があるので確認してください。2つの水分量を足したものが1日に実際に摂取できている水分量です。

犬が水を飲まないときのよくある質問

ここでは、飼い主の方から特に多く寄せられる疑問について、ポイントを押さえてわかりやすく回答します。

• Q1.水も飲まず、ご飯も食べないときはどう対処すればいい？
• Q2.犬は何時間水を飲まないでも大丈夫？
• Q3.夏や暑い日に水を飲まないのは熱中症のサイン？
• Q4.牛乳を水代わりにあげても大丈夫？
• Q5.水を飲まないことで起こりやすい病気はある？

Q.1水も飲まず、ご飯も食べないときはどう対処すればいい？

A.水やご飯にまったく口をつけず、ぐったりしている状態は、SOSサインと受け取るべきです。消化器のトラブルや感染症など、何らかの体調不良が隠れている可能性が高く、放置すると症状が悪化することもあります。

こうした様子が見られたときは、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。

Q.2犬は何時間水を飲まないでも大丈夫？

犬が何時間水を飲まなくても平気かは、年齢や体調によって異なりますが、健康な成犬でも半日〜1日以上水を口にしない状態は危険です。特に子犬や老犬、持病のある犬は脱水が早く進むため、数時間飲まないだけでも体調を崩すことがあります。

普段より飲まない状態が続いたり、元気がない、ぐったりするなどのサインがあれば、早めに動物病院へ相談しましょう。

Q3.夏や暑い日に水を飲まないのは熱中症のサイン？

A.熱中症の初期には、元気がない、ぐったりする、体が熱いといった症状が見られます。軽度の場合は、涼しい場所へ移動し、飲める状態なら少量ずつ水分を与えても問題ありません。

熱中症が疑われる場合、体のタオルを巻いて水道水をかけてください。この時に決して氷水を使ったり、冷やし過ぎには注意してください。首や股関節などの太い血管の所に保冷剤を置くのは、あまり効果的ではないため、水道水をかけて冷やしてください。

ただし、意識がもうろうとしている場合は、応急処置よりも速やかに動物病院に行くことが最優先です。

Q4.牛乳を水代わりにあげても大丈夫？

A.牛乳は身近な飲み物ですが、乳糖を消化できない「乳糖不耐性」の犬では下痢を起こすことがあり、水の代わりとして与えるのは適切ではありません。

どうしてもあげたい場合は、乳糖を調整した「犬用ミルク」を選ぶと安心です。また、ヤギミルクは牛乳より乳糖が少なく、胃腸への負担が比較的少ないといわれており、牛乳でお腹をこわしやすい犬にも取り入れやすい飲みもので、おすすめです。

どちらも与えるときは、様子を見ながらまずは少量から試すことが大切です。

Q5.水を飲まないことで起こりやすい病気はある？

A.水分が不足すると、体の中で老廃物を流したり尿を作ったりする働きが弱くなり、次のような病気を起こしやすくなります。

• 腎臓病
• 尿路結石
• 膀胱炎
• 口臭、歯周病
• 便秘
• 涙やけ、目脂
• 皮膚疾患
• 毛艶の悪さ
• 肥満
• 体臭が強くなる

どれも水分不足がきっかけで症状が悪化することが多いため、日頃から十分な飲水量を保つことが予防につながります。

まとめ

犬が水を飲まない背景には、食事内容や環境の変化、体調不良などさまざまな要因が隠れています。原因を一つずつ確認し、無理のない方法で水分補給をサポートしていけば、多くの場合は徐々に改善が見込めます。

ただ、少しでも様子に違和感があるときや不安が残るときは、早めに動物病院へ相談することが大切です。愛犬が毎日を元気に過ごせるよう、普段から様子を見守っていきましょう。